ある夜、私と彼女は映画を観に行く予定だった。
私はバイトを7時ごろ終え彼女の自宅までおよそ40分ぐらい車を走らせいつも通り彼女を、迎えに行った。この時間に観に行くのはレイトショーで安く観るためだ。
その道中、交差点を過ぎた道なりに白い紙袋が歩道に放置してあった。なにもない歩道にポッンと放置されていた。私は彼女になんだろうあれはと話しをしたらもしかしたらあの袋の中に数千の札束が入っているんじゃないかと冗談で話した。映画の上映時間もあり通り過ぎた。
映画を観た帰り12時ごろ同じ道を帰ったらその紙袋はなくなっていました。
なくなっていたので惜しかったことをしたなぁなどと笑い話にした。
もう15年ぐらい前の話だが年に1回ぐらいその話をふとした時に当時の彼女である私の妻とすることがある。あれの中の金があれば人生変わったかなぁ、でもきっとヤバイお金だし小心者だし警察行くよねなどと。
当時観た映画は何か全く覚えていないがこの話だけは情景と共に鮮明に覚えていて残念なことをしたねと笑うのである。
なにを記憶してなにを忘れるかなんてどういう基準か分からなくなる。映画は興味があって観たはずなのに路上の紙袋しか覚えていない。
紙袋エピソードを残す私の頭は彼女との共通の話題を選んで記憶したということだ。
今でもその話でたまに盛り上がるために。